「軍用地の倍率が上がっている今、売却すべきか?」
「先祖代々の土地を売ると、税金でほとんど残らないのでは?」
沖縄県特有の資産である「軍用地(米軍基地用地など)」。
近年、売買価格(倍率)の高騰により売却を検討される方が増えていますが、正しい税金の知識がないまま売却し、確定申告の時期になって多額の納税額に驚くケースが少なくありません。
本記事では、軍用地売却にかかる「譲渡所得税」の仕組みと、手元に残るお金(手取り)を最大化するためのポイントを、沖縄の税理士法人袖野会計が解説します。
この記事のポイント
- 軍用地を売った利益は給与とは別の「分離課税」になる
- 所有期間が「5年を超えるか」で税率が約2倍変わる
- 先祖代々の土地は「取得費(買った値段)」が不明なことが多く、税金が高くなりやすい
- 売却前に「手取りシミュレーション」をすることが重要
1. 軍用地売却にかかる税金「譲渡所得」とは?
軍用地などの不動産を売却して得た利益は、「譲渡所得(じょうとしょとく)」と呼ばれます。
これは、会社からの給与やお店の売上(事業所得)とは切り離して計算する「分離課税」という方式で税額が決まります。
計算式:利益(譲渡所得)の出し方
- 売却価格: 実際に売れた金額(年間借地料 × 倍率)
- 取得費: その土地を買った時の代金、購入時の手数料など
- 譲渡費用: 売るためにかかった仲介手数料、印紙税、測量費など
つまり、「売値」から「経費(買った値段+売る経費)」を引いた残りに対して税金がかかります。
2. 税率が2倍違う!「5年ルール」に注意
譲渡所得にかかる税率(所得税+住民税)は、その土地を「どのくらいの期間持っていたか」によって大きく異なります。
判断基準は「売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているかどうか」です。
| 区分 | 所有期間 | 税率(合計) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
※上記税率には復興特別所得税を含みます。
最近購入した軍用地を転売する場合(短期譲渡)は、利益の約4割が税金として持っていかれます。
一方、相続した土地などで長く保有している場合(長期譲渡)は、約2割で済みます。売るタイミングを1年待つだけで、手取りが数百万変わることもあるため注意が必要です。
3. 先祖代々の土地は税金が高い?「概算取得費」の罠
沖縄の軍用地売却で最も相談が多いのが、「買った時の契約書がない(いくらで買ったか分からない)」というケースです。
戦前から持っている土地や、親・祖父から相続した土地の場合、購入価格が不明なことがほとんどです。
取得費が不明な場合の「5%ルール」
購入額が証明できない場合、「売った金額の5%」を取得費(買った値段)とみなして計算します。
これを「概算取得費」といいます。
逆に言えば、売値の95%が利益(儲け)とみなされてしまうため、税金が高額になりやすいのです。
4. 【シミュレーション】5,000万円で売れたら手取りはいくら?
以下の条件で、実際に計算してみましょう。
- 売却価格:5,000万円
- 所有期間:長期(先祖代々の土地)
- 取得費:不明(5%ルールを適用 = 250万円)
- 譲渡費用:160万円(仲介手数料・印紙代など)
【ステップ1:利益の計算】
5,000万円 -(250万円 + 160万円)= 4,590万円(譲渡所得)
【ステップ2:税金の計算】
4,590万円 × 20.315%(長期税率) ≒ 約932万円(税金)
【ステップ3:手取り額】
5,000万円 - 160万円(経費) - 932万円(税金) = 約3,908万円
このように、5,000万円で売れても、約1,000万円近い税金が発生し、手取りは約3,900万円となります。
この納税資金を確保しておかないと、翌年の確定申告や住民税の支払いで資金繰りが破綻してしまいます。
5. 特別控除(5,000万円控除)は使える?
よく「公共事業で土地を売ったら5,000万円まで税金がかからない」と耳にすることがあります。
これは「収用等の場合の特別控除」ですが、適用されるのは国や自治体に土地を買い取ってもらった場合に限られます。
一般的な軍用地の売買(不動産業者や個人投資家への売却)では、この特例は原則として使えません。
ただし、相続した土地を期限内に売却した場合に使える「取得費加算の特例」など、状況によっては節税できる制度もあります。
まとめ:売却前の「手取り試算」は必須です
軍用地の売却は動く金額が大きいため、税金の判断ミスが数百万円の損失につながります。
「今の倍率で売ると、最終的にいくら手元に残るのか?」
「相続してから売ったほうが得なのか?」
このようなお悩みをお持ちの方は、売買契約を結ぶ前に、ぜひ一度税理士にご相談ください。
袖野会計では、軍用地に特化した税務シミュレーションを行い、お客様にとって最も有利な選択をサポートします。
税理士法人袖野会計(那覇・北谷)
営業時間:平日 9:00〜18:00
対応エリア:沖縄県全域(軍用地の売却・相続相談多数)


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