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【節税の王道】倒産防止共済は本当に得か?出口戦略の全て

「利益が出たから、倒産防止共済に入って節税しませんか?」

沖縄で会社を経営されている社長様なら、一度は耳にしたことのある提案ではないでしょうか。経営セーフティ共済、通称「倒産防止共済」は、多くの会計事務所が推奨する「節税の王道」として知られています。

確かに、掛金を全額損金に算入できるというメリットは非常に魅力的です。しかし、その甘い誘惑の裏に、将来のキャッシュフローを大きく揺るがしかねない「隠れた罠」が潜んでいることを、あなたはご存知でしょうか?

この記事では、単なるメリットの紹介で終わるのではなく、多くの経営者が見落としがちなデメリットと、何よりも重要な「出口戦略」について、私たち税理士法人袖野会計沖縄オフィスが、沖縄の中小企業の経営実態を踏まえ、徹底的に解説します。

この記事を最後まで読めば、倒産防止共済があなたの会社にとって本当に「得」なのかを冷静に判断し、もし加入するならば、将来にわたって会社の利益を最大化するための戦略的な活用法を理解できるようになります。

そもそも「倒産防止共済(経営セーフティ共済)」とは?

クエスチョン

まず、制度の基本をおさらいしましょう。 倒産防止共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する制度で、本来の目的は「取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐ」ためのものです。

  • 加入資格: 設立から1年以上経過している中小企業や個人事業主が対象です。
  • 掛金: 月額5,000円から20万円まで自由に設定でき、最大800万円まで積み立てることができます。
  • 節税効果: 支払った掛金は、年間最大240万円まで、その事業年度の損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。
  • 本来の機能: 取引先が倒産した場合、積み立てた掛金の最大10倍(最高8000万円)まで、無担保・無保証人で融資を受けることができます。

なぜ多くの経営者が加入するのか?3つの強力なメリット

この制度が「節税の王道」と言われる理由は、主に3つのメリットがあるからです。

メリット1:即効性のある、パワフルな節税効果

これが最大の魅力です。例えば、当期の利益が1,000万円見込まれる会社が、年間の上限である240万円を掛金として支払った場合、課税対象となる所得を760万円に圧縮できます。法人税率を約30%と仮定すると、約72万円(240万円 × 30%)もの税金を合法的に繰り延べることができるのです。利益が大きく出た年度に、すぐ実行できる対策として非常に有効です。

メリット2:万が一の際の「保険」としての機能

本来の目的である、連鎖倒産を防ぐためのセーフティネット機能です。沖縄県内でも、予期せぬ取引先の倒産は起こり得ます。そんな時、無担保・無保証人で迅速に資金を借り入れられるこの制度は、会社の命綱となり得ます。

メリット3:「第二の銀行」としての資金調達機能

意外と知られていませんが、取引先の倒産がなくても、急な資金需要が発生した際には「一時貸付金」として、積み立てた掛金の範囲内で低利の貸付を受けることができます。これにより、銀行融資の審査を待てないような緊急時にも、柔軟にキャッシュを確保することが可能です。

【要注意】見落としがちなデメリットと「出口」という名の最大の罠

悩んでる様子

ここからが本題です。上記のメリットだけを見て安易に加入すると、数年後に深刻な問題に直面する可能性があります。

デメリット1:最大の罠「解約手当金」は全額が課税対象

これが最も重要なポイントです。倒産防止共済を解約すると、支払期間に応じた「解約手当金」が戻ってきます。40ヶ月(3年4ヶ月)以上支払っていれば、掛金は100%(最大800万円)戻ってきます。

しかし、この戻ってきた解約手当金は、その事業年度の「益金(雑収入)」として、全額が課税対象となるのです。

例えば、掛金を上限の800万円まで積み立て、業績が良い年に解約したとしましょう。その年の利益が1,000万円だった場合、解約手当金の800万円が上乗せされ、課税所得は一気に1,800万円に跳ね上がります。結果として、過去に節税した分、あるいはそれ以上の税金を、将来まとめて支払うことになるのです。

つまり、倒産防止共済の節税効果は「税金の免除」ではなく、あくまで**「税金の繰り延べ」**でしかない、という事実を絶対に忘れてはいけません。

デメリット2:「40ヶ月の壁」と資金拘束

掛金が100%戻ってくるのは、前述の通り40ヶ月以上支払った場合です。もし、それ以前に急な資金需要で解約せざるを得なくなった場合、掛金は元本割れを起こします。

掛金支払月数返還率
12ヶ月未満0%(掛け捨て)
12ヶ月~23ヶ月80%
24ヶ月~39ヶ月85%~95%
40ヶ月以上100%

この「40ヶ月の壁」は、最大800万円もの会社の現金を長期間拘束することを意味します。成長のために設備投資や人材採用で資金が必要な時期に、この資金拘束が足かせになる可能性も十分にあります。

【最重要】税理士の腕の見せ所。「出口戦略」を制する者が、共済を制する

打ち合わせの様子

「では、倒産防止共済は入らない方がいいのか?」 いいえ、決してそんなことはありません。明確な「出口戦略」を持って活用すれば、これほど強力な財務戦略ツールはありません。

出口戦略の基本は、「解約手当金という大きな利益(益金)が発生する年度に、同額程度の大きな経費(損金)をぶつけることで、税負担を相殺する」ことです。

出口戦略1:役員退職金と相殺する【王道パターン】

最も効果的で、計画的に実行しやすいのがこの方法です。社長や役員の退任時期は、ある程度計画的に決めることができます。その退任のタイミングに合わせて倒産防止共済を解約するのです。

【具体例】

  • 10年かけて積み立てた倒産防止共済の掛金が上限の800万円に到達。
  • 社長が退任する事業年度に、会社から社長へ「役員退職金」を800万円支払う。
  • 同一事業年度に、倒産防止共済を解約する。

この場合、会計上は以下のようになります。

  • 利益(益金): 解約手当金 800万円
  • 経費(損金): 役員退職金 800万円
  • 差し引き: 0円

これにより、解約手当金にかかる法人税をゼロにすることができます。さらに、役員退職金は、受け取る個人にとっても給与所得に比べて税制上非常に優遇されているため、会社から個人へ、税負担を最小限に抑えて資産を移転する効果も期待できます。

出口戦略2:大型の設備投資・修繕と相殺する

数年後に、工場の建設や大型機械の導入、大規模な店舗改装などを計画している場合も、有効な出口となり得ます。これらの設備投資や修繕費は、多額の損金を生み出します。その支出のタイミングに合わせて共済を解約することで、税負担を相殺します。

出口戦略3:赤字年度に解約し、キャッシュを補填する

これは計画的な戦略とは少し異なりますが、万が一、会社の業績が悪化し赤字に陥った場合の活用法です。赤字の年度に共済を解約すれば、発生した利益(解約手当金)は赤字と相殺されるため、法人税はかかりません。そして、手元には最大800万円の現金が戻ってくるため、会社のキャッシュフローを補強し、経営の立て直しを図るための貴重な資金とすることができます。

まとめ:あなたの会社に、未来を見据えた「出口戦略」はありますか?

プラン

倒産防止共済は、多くのメリットを持つ一方で、出口戦略なしに加入すると、将来の経営を圧迫する「諸刃の剣」にもなり得ます。

重要なのは、加入を検討する「今」、将来の解約時までを見据えた長期的な計画を立てることです。

  • あなたの会社には、数年後、数十年後に、役員退職金や大型投資といった、大きな損金を計上する計画はありますか?
  • 毎月の掛金を支払い続けても、会社のキャッシュフローは問題ありませんか?

これらの問いに明確に答えられないのであれば、安易に加入すべきではありません。

私たち税理士法人袖野会計沖縄オフィスは、目先の節税提案だけでお客様を満足させようとは思いません。お客様の会社の成長ステージ、将来のビジョン、そして事業承継までをも見据え、長期的な視点で会社のキャッシュフローを最大化するための、最適な財務戦略をご提案します。

倒産防止共済は、その戦略を実現するための、数あるツールの一つに過ぎません。あなたの会社にとって、それが本当に今必要なツールなのか、一緒に考えてみませんか?

▶︎ 税務・財務戦略に関するご相談は、税理士法人袖野会計沖縄オフィスへ

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